2007年02月07日

太陽を覗く。

まだ怪獣ケシゴムとかが流行っていた頃のことです。
その日は、何十年に一回の特別な日、
太陽の一部が月によって隠れる、『部分日食』が見られる日でした。

ss親切な先生のクラスでは、前日からそのことがアナウ
ンスされていました。 当日、太陽を眺めるための、黒いフィルムが配られたクラスもありました。

だけど僕らは何も知りませんでした。


当日の放課後、ロクムシをして遊んでいると、校庭のところどころで、他の小学生が空を見上げています。彼らが何をしているのか、僕らには分かりません。


マッキー(仮名。現在岐阜県警刑事)が、素早く情報を仕入れてきました。
何でも今から太陽が欠けるらしい。それは凄いものらしい。黒くて薄いもので透かすように見るといいらしい。

太陽が欠ける…?

それがどういうことなのか、僕らにはイマイチ分かりません。
だけどそれは、いつもやっているロクムシより、エキサイティングなできごとに思えました。


段差のあるところに陣取り、僕らは空を見上げました。
空は快晴で、太陽は南にあります。
だけどそれは強烈に光り輝いていて、形を確認することなんてできません。
太陽を見続けることは、とても困難でした。

太陽が欠ける…?

ある者は黒い下敷きを取りだして、透かすように太陽を見てみます。
だけどそれでは通過する光が少なすぎました。
他にもいろいろ試してみましたが、うまくいきません。

僕らはだんだん無口になっていきました。
太陽が欠ける…。次第にそれはどうでもいいことのように思えてきました。
「ガチャガチャをやりたいんだけど、誰もお金を持っていない」
例えるならそんな時と同じ気分で、僕らは空を見上げていました。


そんな局面を打開したのは、イトー君(仮名。被デスラーパンチ数2位)でした。
両手を複雑な形に組んで空の一点を見つめていたイトー君が、
静かに、「見える」、と言いました。

イトー君(仮名)は、左手の人差し指と右手の人差し指と親指で小さい三角形を作って、その間から太陽を覗いていました。

そんなので見えるわけないじゃん、と僕らは思いました。
だけどマネしてやってみると、確かに太陽の形が見えた気がします。
イトー君(仮名)は誰にも何も教わらず、その方法を発見したのです。格好いい!

僕らは夢中になって、太陽を覗きました。
指の隙間が十分に小さく、そしてちょうどいい案配に光が遮られたとき、
瞬間的にですが、太陽はその形を、僕らに見せてくれました。ちゃんとくっきりと。

「見えた!」
僕が言い、マッキー(仮名)も言い、やがて大橋君や臼井君も言いました。
それは確かに、円の一部が丸く欠けた、日食の太陽の姿でした。



そんな太陽の眺め方は、目に悪いし危険なので、マネをしてはいけません。
だけどあの日、僕らは確かに日食を見たのです。

丸く欠けた太陽を、僕らは確かに見たのです。



Posted by nakamurakou at 06:12