2005年08月08日

溶けてしまえ

暑さを避ける目的もあって、ある飲食店に入った。

 しばらくすると隣の席に、若い男女が座った。
女は自分のことを“姫”と呼んでいる。
 男は囁くような声であまーくしゃべった。

 「姫はねぇー、ディズニーランドに行きたいんだよっ」
 「ああー、いいねー、ディズニーランド、それはすごくいいよー」
 「姫とディズニーランドに行くとねぇ、大変なんだよ、開園ダッシュだよぉ」
 「ははははー、そうなんだー。それはすごいねえー」

あるいは寒い季節なら彼らのことも気にならなかったかもしれない。
 だが今は夏だ。日記に三回連続で書くほど暑い。暑いのだ。

 「姫にはねぇ、一万人くらいファンが居るんだよ」
 「へー、そんなに居るんだー」

俺は違う! と吠えたかった。
 星が墜ち山が砕けようとも、俺はあんたのファンじゃない!
 ここに居るみんなも、あんたのファンじゃない!

「マルヤマ君もねー、そのうちの一人なんだよー」
 「へー、そうだったんだー」
 「そうだようー」

 姫とマルヤマ君の甘いトークは延々と続いた。

姫も姫だがマルヤマ君もマルヤマ君だった。
 マルヤマ君の美徳が例えば
「フェミニスト、優しい、大人だ、包容力がある、色男」
など複数あるとして、その全ての単語の前に『エセ』をつけたかった。


 ディズニーランドにはお城があり、姫がいる。
 町中にもそれを許す器ある限り、姫が存在する。

Posted by nakamurakou at 18:08 │TrackBack(0)

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